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第1回 健康社会の中心にある「歯」

 ―鍵は歯根膜にあった―
更新日:2026年1月30日
辻 孝
下 義生代表取締役CEO

早稲田大学理工卒、中央大学・院総合政策研究科修士。2016年にトヨタ自動車、常務役員、2017年に日野自動車、社長、2021年に同社、会長を歴任。2024年9月より当社、代表取締役。 プロフィール詳細 >
歯根膜という未踏領域への挑戦

 歯科インプラント市場は 2024 年に約 49 億ドル、2030 年には 84 億ドルへ拡大し、年平均成⾧率は約 10%と見込まれています。北米・欧州では保険・規制環境の整備が進み、臨床普及の基盤が形成されつつあります。 アジア太平洋地域では高齢化と可処分所得の上昇が需要を押し上げています。

 こうした構造的成⾧市場において、私たちオーガンテックは「次世代インプラントの新しい標準」を提案します。目指すのは、単なる人工補綴ではなく、生体本来の機能を取り戻す医療機器の確立です。
現行インプラントが残してきた未解決領域 ― 歯根膜の不在

 現在主流のインプラントは、顎骨と人工材料を直接結合する「オッセオインテグレーション」により高い安定性を実現してきました。一方で、天然歯が持つ歯根膜という微細な支持組織は再現されていません(図1)。

 歯根膜は
・ 咬合衝撃の吸収
・ 噛み応えを脳へ伝える固有感覚
・ 血管・免疫による生体防御
という重要な役割を担っています。この機能が欠けることで、⾧期的には骨吸収、部材破損、インプラント周囲炎などの課題が残り、患者満足度と医療経済性の双方に改善余地が存在してきました。

 私たちは、この「歯根膜の不在」こそが次世代革新の核心であると捉えています。
図1
図1 オッセオインテグレイション(骨結合)インプラントの構造
バイオハイブリッドトゥース ― 生体機能を取り戻す医療機器

 オーガンテックが開発するバイオハイブリッドトゥースは、人工構造体と歯根膜由来組織ユニットを融合させ、歯を支える生体足場そのものを再構築する新しいアプローチです(図2)。
図2
図2 歯根膜付きインプラントである「バイオハイブリッドトゥース」
 この構造により、
・ 天然歯に近い衝撃吸収特性
・ 噛み応えを伝える固有感覚
・ 血管網を伴う生体防御機能
の再現が可能になります。さらに、製造工程内で細胞を用いない設計とすることで、医療機器(FDA 510(k) クラスⅡ)としての規制ルートを見据え、量産性・品質均一性・国際展開性を両立させています。
医療現場への実装とスケーラビリティ

 治療プロトコルは、従来インプラントと親和性の高い手技設計とし、医師の技能差に左右されにくい再現性の高い施術体系を確立しています。これにより、
・ 再手術リスクの低減
・ 医師トレーニングの効率化
・ 患者説明・同意プロセスの標準化
が可能となり、臨床導入の障壁を最小化します。

 私たちは、製品供給だけでなく、教育・データ・品質管理を統合したプラットフォーム型事業モデルを構築し、持続的な収益性と市場浸透の両立を目指します。
健康寿命延伸への貢献とグローバル展開

「自分の歯と同じ感覚で噛めること」は、栄養摂取、認知機能維持、全身疾患予防に密接に関わる重要な健康基盤です。 バイオハイブリッドトゥースは、医療の質を高めながら医療コストの最適化にも寄与する可能性を持っています。

 私たちは日本発アカデミア技術を基盤に、米国 FDA 承認を視野に入れた国際臨床・製造・販売体制を段階的に構築し、世界共通の治療標準の確立を目指します。
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※本記事は、2026年1月30日時点の情報に基づく研究・開発段階の内容であり、確定的な医療行為を示すものではありません。